院長滝 俊哉
たき としや

日本糖尿病学会・近畿支部評議員
日本内科学会認定医 医学博士

日本では近年糖尿病患者およびその予備軍が増え続け、国民病の1つとして注目されています。糖尿病患者およびその予備軍が増加した理由としては、
①欧米型食生活に代表される飽食の時代(特に脂肪摂取の増加)
②便利な生活に伴う運動不足等により日本人全体が肥満(特に内臓脂肪型肥満)になってきたことが主因と考えられています。糖尿病との関連でメタボリックシンドロームという言葉も最近よく耳にされるかと存じます。
メタボリックシンドロームとは内臓脂肪が蓄積することにより、血糖値および血圧の上昇・脂質異常(中性脂肪の上昇・HDLコレステロールの低下)などが生じてくる病態です。脂肪細胞はアディポカインという生理活性物質を分泌しているのですが、内臓脂肪が増加するとアディポネクチンなどの良いアディポカインが減少し、TNF-α・遊離脂肪酸などの悪いアディポカインの分泌が増加してきます。このようなアディポカインのバランスの変化が血糖値および血圧の上昇・脂質異常を引き起こし、心筋梗塞・脳梗塞等の動脈硬化性疾患の発症要因となります。
糖尿病の大部分を占める2型糖尿病はこのメタボリックシンドロームの延長線上にあることが多いと考えられています。ですから糖尿病を予防するためには、内臓脂肪がたまらないような生活を心がけることが第一です。ただ日本人は膵臓のインスリン分泌能力が低いため、欧米人ほど肥満していない段階でもインスリンが不足して糖尿病を発症してしまうこともあります。
さて、糖尿病状態が持続するとどんな不利益があるのでしょう?糖尿病状態を放置して高血糖が持続すると細い血管が障害されて①網膜症(失明約4000人以上/年)②腎症(透析導入1万人以上/年)③神経障害(手足のしびれ等)の三大合併症が生じます。それだけではなく太い血管にも動脈硬化を引き起こし(高血圧・脂質異常症が併存すると特に)、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞になる危険が高くなってしまいます。つまり寿命および生活の質に大きな影響を与えることになります。
糖尿病の治療は以上のようなことから、食事療法と運動療法によって内臓脂肪を減らすような生活習慣にしていくことが基本となります。しかし、必ずしもこれだけでは十分なコントロールができないこともありますので、専門的な立場から薬物療法についてアドバイスさせていただくことがあります。内服薬だけでも作用機序の違う多種類の薬がありますので、それぞれの病態に応じて投薬を行い、合併症を抑制して健康な生活を送っていただくお手伝いをしたいと考えております。健診で異常を指摘された場合は早めの受診をお願いいたします。